続微積分読本(多変数) 小林昭七著

前回紹介した小林先生の微積分の教科書の多変数版です。

これも前回紹介した通り、微積分の教科書としては、必要なことをミニマムにまとめた内容となっており、偏微分、重積分、曲面、線積分・面積分・体積分と、あまり脱線したり過度に細かな内容に触れることなくストレートに項目が展開されていて、すっきりと分かりやすい内容になっています。

といっても重要な内容は省略されておらず、陰関数定理や2重積分の存在証明や、累次積分の証明、ヤコビアン、グリーンの定理など、分かりやすい説明がなされています。細かな点まで厳密に分かろうと思った場合は他書を参照したほうがいいのかもしれませんが、証明やロジックの本筋を理解して全体像をしるには構成に無駄がなくストンと腑に落ちるような内容になっています。これは著者が教育的な観点から必要な内容に絞って論理構成をしているためだと思います。私は、小林先生の他書も持っていますが、どれも数学の本でもともと難しいはずなのに非常に分かりやすい印象を持っているので、著者の力なのだと考えています。

目次です。

第1章 偏微分

  1. 2変数関数の連続性
  2. 偏微分
  3. 方向微分、全微分
  4. 連鎖律、平均値定理
  5. 陰関数定理
  6. 多変数の陰関数と逆変換
  7. 高次の偏微分
  8. テイラー展開
  9. 2次対称行列の固有値
  10. 2変数関数の極大、極小
  11. 制限条件付きの最大、最小

第2章 重積分

  1. 2重積分
  2. 累次積分
  3. 変数変換(2次元の場合)
  4. 極座標による積分
  5. 3重積分と体積
  6. 3次元ベクトル空間
  7. 変数変換(3次元の場合)
  8. 微分と積分の可換性

第3章 曲面

  1. 空間内の曲線と曲面
  2. 2次曲線
  3. 曲線の長さ
  4. 曲面の面積
  5. 曲面の面積 ー 実例

第4章 線積分、面積分、体積分の関係

  1. 線積分
  2. グリーンの定理(平面領域の場合)
  3. ベクトル場
  4. グリーンの定理(ベクトル場表示)
  5. ストークスの定理(曲面領域の場合)
  6. ガウスの発散定理
  7. 微分形式

計算の仕方だけなら、微積分も重積分も大したことはなくてドリルをすればすぐにできるようになると思いますが、その背景にある多変数の際に微分演算が許容されるのか、重積分の面積が確定するかの証明は、数学をちゃんと勉強するのであれば理解しておくべきことだと思います。杉浦先生の解析入門や小平先生の解析入門は、議論が厳密で論理を追っているうちに枝葉の部分の森に入り込んで全体像が分かりにくかったような記憶があります。初めに小林先生の本をざっと読んで全体像を理解してから次に読む書籍としてこうした本を読めばよかったと思っています。

また、線積分、面積分、体積分は、数学よりも前に電磁気学でMaxwellの方程式を導入する際にDivergence, Gradient,Rotationの話で先に学習してまずは道具としての使い方になじんでから数学の授業で話を聞いた記憶がありますが、どうもその時の説明はごちゃごちゃとしていて分かりにくかった記憶があります。小林先生は、微分幾何が専門なので曲面や、この辺りの説明がシンプルかつ分かりやすい内容になっていて、すっきりと分かります。

最後は微分形式まで出てきてページ数も200頁足らずでありさらさらと読むことができるのでまずは初めの一冊としてお勧めできると思います。

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