趣味で相対論

この方は、「EMANの物理学」という物理学のサイトを主催している方で、エンジニアをしていたそうです。

私も物理関係のブログやホームページを閲覧している際にこの方のサイトにたどり着き関係分野のサイトを読んでいたもので、本が出た事は知っていたのですが、今回書籍で通読してみたいと思い手に入れたものです。

この本の特徴は、「趣味で相対論」とあるように専門家ではなく学部で勉強した方から見た相対論の疑問や計算について、専門書のようにはしょったり、「ちゃんと自分で手を動かして考えてね」ということなく、本の中で出てくる疑問に関して、泥臭い方法でもガリガリと分かる形で計算を展開して見せているところです。

この辺り、いちいち本で展開すると分厚くなりすぎたりするので普通の専門書では割愛されます。また、入門書をというと、一般相対論については、数式を使わずにブルーバックスのようにお話になるか、式が天下り的に出てくるものが多く、ちゃんと順を追って説明する教科書だと、分からないところは、当然読者は分かるものとして省かれている、というジレンマに答えているところが素晴らしいです。

大学1年時の解析学や、代数幾何や、力学、電磁気学などは、理科系の大学の教養科目でもあり、それこそマンガで分かるシリーズも出てきていたり、試験で単位をとれるシリーズなど、まず、高校から大学の科目のギャップを埋めるために丁寧な計算方法や概念が説明されているものがあって、少なくとも初学者が独学で理論背景は別として計算は分かるようなものは最近多く出てきています。

もちろん、ちゃんと深い理解をするためにはある程度定評のある教科書をちゃんと読んで問題演習をしなければならないのですが、サイエンス専攻をする人でなければ理科系であっても単位を取ってしまえさえすればよく、専門では余り関係がない、(とはいえ、解析、線形代数はだいたい出てくると思いますが。。。)人もいると思うので、そういったニーズがあろうかと思います。

他方、特殊相対論については、ローレンツ変換位で2次元の回転行列、3次元の行列側買っていれば、Minkowski空間に拡張して多少sinh, coshなどの関数の知識があれば式は取り回せるので、その分野までの本はよくありますが、一般相対論となると需要が乏しいのか、その「かみくだいた」説明をしてくれている本が余りありません。

私の場合は、ちょうどそうした狭間にあって関心はあるのですが、学部や院で授業をとらなかったためにその分野の演習が欠落しています。今になって思えば。。。なのですが、仕方ありません。

そうして相対論の本を何冊か読んでいるのですが、どうもしっくりとくるものが少なかったです。この本については、前提とする知識も少なく、特殊相対論の概略と電磁気学と力学が教養で終わっていれば十分読み進む事が出来ます。

電磁気学もMaxwell方程式の書き換え出てきますが、ここを飛ばせばリーマン幾何学自体は数学そのものなので、数学が得意な高校生でも抽象概念について行ければ何とかなるのではないでしょうか。

こうした泥臭いところをやってみないと理解が深まらないと思いますし、素人的に疑問に思う点に丁寧に答えてくれているよい本だと思います。

今になって思えば、私は、一般相対論の物理現象が分からなかったのではなく、テンソルの記法とその演算操作に慣れておらず、ついていけなくなったのだと思っています。
テンソル演算を駆使して勧められるリーマン幾何学の結論を自分で手を動かす事なく天下り的に理解しようとしても限界があり、他方、それを手を動かそうとしても、日本の教科書でははしょりすぎてて分からずにいたということが要因だと思います。(著者は十分丁寧というでしょうけど。。。)

微分幾何で表記すると本質的なところを別のエレガントな記述で理解できるのですっきりとはしますが、一度は計算をガリガリとやった方がいい、具体的な計算事例を見たいという事であれば、以下のものがおすすめです。

Relativity Demystified
Schaum’s Outline of Tensor Calculus (Schaum’s Outline Series

相対論の微分幾何での記述については、以前紹介した以下の本が、自分にとって分かりやすかったです。(まだ完全に使いこなせるようになったとはとても言えませんが。。。)
Differential Forms with Applications to the Physical Sciences (Dover Books on Mathematics)
微分・位相幾何 (理工系の基礎数学 10)

日本の本だと、ちょうど本当の専門と素人の間より進んだレベルで痒い所に手が届くものがないのかもしれません。

私も本業では全く違う事をしていますので相対論を勉強するのは趣味の域でしかないのですが、せめてCourse Curriculumで扱われる程度のレベルには理解を深める事が出来ればと思っています。

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