東大出版の齋藤正彦先生による線形代数の教科書です。私は線形代数は、この教科書で勉強しました。普通の人が線形代数で知らないといけないことはこの本に載っている内容でだいたい網羅されているのではないでしょうか。
目次を示します。
第1章 平面及び空間のベクトル
第2章 行列
第3章 行列式
第4章 線形空間
第5章 固有値と固有ベクトル
第6章 単因子及びジョルダンの標準形
第7章 ベクトル及び行列の解析的取り扱い
附録1 多項式
附録2 ユークリッド幾何学の公理
附録3 群及び体の公理
問題演習するには十分ではないかもしれませんが、説明も平易で分かりやすく第1章から順を追って読んでいけば初学者でも理解できるのではないでしょうか。
分かってしまえさえすればなんてことはないのですが、第4章の線形空間の考え方は、大学1年時には抽象度が高くイメージがあまりできないかもしれません。
物理では、波動や量子力学を習うとフーリエ級数や、ヒルベルト空間の話が出てくると俄然具体的なイメージしやすい内容となり、また具体的な縮退している固有値を求めるなどの実例が出てくるので、次第になじんでくるかと思います。
私も1年時は線形代数については機械的な計算はできたのですが、線形空間のところは、抽象的すぎて、あまり有り難みやすごさを感じることがなく、フーリエ級数が出てきたときに三角関数を基底にとるという考え方の裏に線形空間の考え方があることを理解して、意義を噛みしめることになりました。「内積」という概念も空間ベクトルの内積だけではなく、いろんな内積があることを物理を通じて知りました。
大学院では、基底状態を求めるために固有値をコンピュータで計算してましたので、線形代数とは末永くつきあうことになるかと思います。
<2021年追記>
線形代数は、諸学者向けにたくさんの教科書が出ていますが、数学科でなければ、この本と佐武先生の「線形代数学」が理解できればよいのではないでしょうか。
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