あまり有名ではないですが、大学教養課程の微積分学の教科書です。1変数編と多変数編に分かれていて、今回は1変数の本の紹介です。
著者は、微分幾何の大家の小林昭七先生です。長らくUC Berkleyで教鞭をとられていました。私は、小林先生の本を何冊か持っていますが、内容によらず説明が簡明ですっきりとしています。この読後感はなかなか他の数学者の著作では感じられないのですが、おそらく極めて明晰な方で、記述内容について内容を絞り、分かりやすいように組み立てた構成になっているからだと思います。
大学教養向けの微積分の教科書は何冊が持っていて読み比べたこともありますが、この本と前に紹介した田島先生の解析入門 が非常に分かりやすいと思います。初学者の方はまずはどちらかの本で勉強することをお勧めします。この小林先生の方がより初学者向けだと思います。
他書と比べると扱う項目が絞られており、厳格や緻密な議論については必要な範囲に絞って展開しており、枝葉の細かい議論はバッサリと落としている感じです。読了すれば、微積の全体像が分かります。さらに厳密な記述、深い内容を求めるのであれば小平先生の解析入門、杉浦先生の解析入門あたりでしょうか。
目次です。
第1章 実数と収束
- 自然数
- 整数
- 有理数
- 実数
- 数列と収束
- 実数の完備性
- 級数
第2章 関数
- 連続関数
- 三角関数
- 逆三角関数
- 指数関数
- 対数関数
- 双曲線関数
- 複素数
- 代数学の基本定理
- 有理関数の標準形
第3章 微分
- 直線とその勾配
- 微分
- 微分の基本的性質
- 三角関数の微分
- 指数関数と対数関数の微分
- 定数eについて
- 高次の微分
- 微分とグラフ
- 平均値定理とロピタルの定理
- テイラー展開
第4章 積分
- 原始関数(不定積分)
- 部分積分
- 有理関数の積分
- 定積分
- テイラー展開(積分の形の剰余項)
- 広義の積分
- 関数列の微分と積分
- 関数項級数、べき級数
- 複素べき級数
ページ数は200ページ程度です。第1章の実数の部分は、コンパクトや集積点の話はなく、イプシロン・デルタでさっとコーシー列まで極限の考え方を紹介し、級数まで上げられています。第2章の関数は、一様連続以外は、関数の紹介と複素数の紹介で高校数学プラスアルファ位の基本的な内容ですが、指数関数を実数べきまで拡張する証明はちゃんとされています。第3章の微分は高校数学レベルですかね。あまり新しいことはありません。第4章の積分は、定積分の部分は軽めで、田島氏の解析入門の方が詳し目です。広義積分やべき級数のところは、扱っている事例はシンプルなものですがそれがどういうことなのか、ということを理解するには十分な内容となっています。
本書でさらっと全体像を把握して演習書で問題を解いて一通りなじんで自信がついたら、本格的な教科書にチャレンジするという感じでしょうかね。高校数学からのギャップがそれほどないので割と入りやすいのではないかと思います。
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