あきらめない一般相対論ー富岡竜太著

一般相対性理論の本です。著名な教科書はいろいろ出ていますが、格式が高くて分厚いのと、テンソルの記法が古くて分かりにくいということがあるため、わかりやすい本としては、以前紹介したRelatvity DemystifiedがCartan形式の記法を導入しており分かりやすいと思います。

Relativity Demystified

今回の著者の富岡竜太氏は、この本の日本語訳の本を出している方で、理科大応用数学卒、筑波大数学科博士課程中退の方で、相対論や場の量子論の本の上記シリーズの日本語訳の本を出している方です。

このMaRu-WakaRiサイエンティフィックシリーズについては、私自身はもとのDemystifiedの方を持っているので本屋で眺めた程度です。今から購入を考えている人はこの富岡氏の本を購入された方が価格も安いのでお勧めです。

さて、今回と取り上げる本の特徴ですが、一直線で一般相対性理論を理解するために必要な構成となっています。普通の本は、特殊相対論の物理としての現象論や、電磁気学でマクスウェルの方程式を相対論的に書き直すというところが長いのですが、この本はむしろ一般相対性理論を理解するために必要な数学について最小かつ最短の手順で提示されており、分かりやすい記述で表現されています。

内容は数学オリエンテッドですが、数学を専攻している人しか理解できないということはなくて物理学徒であっても十分理解することとができる内容になっています。多様体についても一部出てきていますが、テンソルの導入、接続係数の計算方法について非常に詳しく記載されていますので、これをなぞることで理解することができると思います。

目次です。

第1章特殊相対論

1.1 事象と座標返還

1.2 慣性座標系

1.3 ガリレイの相対性原理と特殊相対性原理

1.4 光速度普遍の原理

1.5 座標系全体での時刻の定義について

1.6 座標変換が運動する質点についても適用できること

1.7 世界間隔の定義

1.8 時間的・光的・空間的

1.9 光円錐

1.10 世界間隔が慣性系によらず不変であることの証明

1.11 慣性系同士の座標変換が線形変換であることの証明

1.12 等長変換としてのローレンツ変換を導く

1.13 アインシュタインの論文にチャレンジ

1.14 コラム ー非常に長い棒を振り回すと先端の速度は光速度を超えるかー

1.15 固有時・四元速度・etc

1.16 コラム ーいわゆるウラシマ効果についてー

第2章 ユークリッド系計量の入った空間と超曲面の幾何学

2.1 R^2の距離と計量の関係

2.2 R^3の距離と計量の関係

2.3 R^3の2点間の距離の計量による定義

2.4 曲がった空間へ

2.5 曲がった空間での距離とは何か?

2.6 曲面とその座標系について

2.7 曲面上に距離を定義する

2.8 接ベクトル空間の基底ベクトルを求める

2.9 曲面の例:R^3に埋め込まれた円筒について

2.10 座標と基底ベクトル

2.11 多様体

第3章 曲がった4次元時空の幾何学

3.1 等価原理

3.2 一般相対性原理と一般共変性原理

3.3 相対論で扱う代表的な座標系について

3.4 スカラー・反変ベクトル・共変ベクトル

3.5 計量テンソルの導入

3.6 ミンコフスキー計量

3.7 ベクトルの平行移動と共変微分

3.8 平行移動の一般化

3.9 測地線の方程式の導出

3.10 双対ベクトル規定の導入

3.11 添え字の上げ下げ

3.12 テンソルの導入

3.13 共変微分の一般のテンソルへの拡張

3.14 テンソルの共変微分を導く

3.15 接続係数の変換について

3.16 接続係数を計量で表す

3.17 計量条件の導出

3.18 リーマンテンソルの定義

3.19 いくつかの恒等式

3.20 ビアンキの恒等式

3.21 アインシュタインテンソルの導入

第4章 アインシュタイン方程式

4.1 最初に

4.2 エネルギー運動量テンソルの導入にあたって

4.3 完全流体のエネルギー運動量テンソル

4.4 ニュートン力学的重力場の方程式

4.5 相対論的重力場の方程式が満たすべき条件

4.6 ニュートン力学の運動方程式との比較

4.7 運動定数κの決定

4.8 アインシュタイン方程式のバリエーション

4.9 コラム ー弱重力場近似 g_μν = η_μν + h_μνの反変成分を求めるー

第5章 パーコフの定理とシュヴァルツシルト時空

5.1 球対称な時空の世界間隔

5.2 パーコフの定理

5.3 シュヴァルツシルトブラックホールの物理的解釈

5.4 ブラックホールはニュートン力学で予想されていた!?

第6章 相対論的宇宙モデル

6.1 一様等方空間

6.2 ロバートソン・ウォーカー計量

6.3 宇宙論的赤方偏移

6.4 一様等方空間のテンソル計量

6.5 フリードマン方程式の導出

6.6 いくつかの宇宙モデルの紹介

6.7 ド・ジッター宇宙

細かく分かれていますが、数学的に丁寧な式の導出、変形がなされているので他の本を読んでよく分からなかった方もこの本を通読すれば、最終的な結論に至るまで追いかけることができるとも思います。

ただし、数学が簡単なわけではないので順を追って理解する必要があります。相対論的で取り上げられている一通りのトピックスは網羅されているので、これとRelativity Demystified が理解できれば、相対論について基本は分かったといえるのではないでしょうか。

個人的には有名なランダウ・リフシッツの「場の古典論」よりずっとすっきりとして分かりやすいと思いました。

特に共変微分からテンソル、接続係数を導入するあたり、アインシュタイン方程式を出すところの具体的な計算がトレースしやすいのでこの辺りで躓いている方にはお勧めです。

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