演習 すぐわかる線形代数(石村園子)

線形代数の初学者向けの演習書です。テキストもありますが、大学1年生でとにかく単位を取るために最低限のことをマスターする。高校生や社会人が線形代数の具体的な内容を知るための本です。

初めに簡単なまとめがあり、例題と続いて演習問題となっており、またその問題の選択も基本的な内容でありながら、線形代数で必要な単元を網羅する内容となっています。初学者向けを念頭に追いいているために、難度の高い話、問題は省かれています。大体2次元、時々3次元の行列で使われていて、成分も実数で、文字式が行列の成分というのはほとんど出てきません。また行列の対角化ではエルミートやJordan標準形の話は出てきません。問題数も例題、演習ともに50題程度と絞られています。

構成はオーソドックスです。シュミットの直交規格化、2次形式の標準化は出てきます。

第1章 行列と行列式

1.行列

2.行列式

第2章 連立一次方程式

1.連立方程式I(未知数の数=式の数 の場合)

2.連立方程式II(一般の場合)

第3章 線形空間

1.線形空間

2.内積

3.線形写像

第4章 行列の対角化

1.固有値と固有ベクトル

2.行列の対角化

3.2次形式

各章のはじめには、各章の流れについてのフロチャートが書かれており、全体像を把握することができる親切なつくりとなっています。

大学の参考書なので、簡単でありながらも記述は他の教科書にも使われる正統表記法が使われており、一般教養、高校生向けの書き方にはなっていませんが、高校生から見た場合に一番ギャップの少ない書き方になっていると思います。

高校生や初学者に定評のあるマセマの本も後日紹介したいと思いますが、こちらは1つ1つの式変形が非常に詳しく書いてあります。むしろくどい、と思う人はこちらの本のほうがすっきりしていて読みやすいのではないでしょうか。ただ、マセマの本の方が広さ深さがあると思います。

線形代数の深い理解の前にとにかく計算のメカニカルな部分について理解して手っ取り早く計算でっきるようになりたいという目的では一番わかりやすいのではないでしょうか。線形代数は、計算方法だけであれば、高校生、場合によっては中学生でもやっていることは四則演算の延長なので、計算だけならできてしまうように思います。

重要なのはこれで計算になじんでなぜこのようなことができるのか、線形空間に慣れ、もっと抽象的なベクトル空間でも同じことができる、ということが分かった時に線形代数の真のすごさ、ありがたみを実感することになると思います。

私の場合、高校の「代数・幾何」で入っており高2で一次変換をやりました。入試問題でも漸化式を行列で解いて確率漸化式の極限を2次元の行列の対角化を使って解くというところまではやっており、3次元行列の外積は物理でよく使うために知っていました。このため、計算のメカニカルなところは問題がなかったのですが、線形空間と抽象ベクトル空間については大学1年の時には全くイメージがつかめず、苦労しました。振動での基準振動、フーリエ級数や量子力学でHeisenbergが行列力学形式でシュレーディンガー方程式と同等な内容を表すこと、ヒルベルト空間あたりの話が出てようやくありがたみとその凄さを実感することになりました。

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