なぜ、ビックバンは起こったか

インフレーション宇宙論の提唱者の一人であるアラン・グースの本です。日本では佐藤勝彦先生が有名ですが、佐藤先生のブルーバックスを読んだので、その対比としてこちらの本を読んでみました。

この本は400頁位ある本で、数式は出てくる事はなく、著者のアラングースが素粒子物理学からどのような契機でインフレーション宇宙論に関わるようになったのかいうことについて、その当時の新進気鋭の研究者の動きやトレンドなどと合わせてどのように研究が進んでいったのかが書かれています。

ワインバーグ・サラムの電弱統一理論については、PeskinやRyderなどの本で既に完成された理論としての結果として勉強しましたが、その時代で研究者をしていた筆者が、Tenureの仕事を得るためでもありますが、どのような研究テーマを設定し、どの分野を掘り下げて競争していたのか、ライバルの研究者とのバトルなど、非常にライブ感があり面白く読む事が出来ました。

大学の研究もはやりのテーマについてこうしたトレンドを追いかけて旬なタイミングでいい仕事をしないといいポストに恵まれないという、米国の大学の熾烈な競争環境を垣間みる事ができておもしろいです。

また、最終的なインフレーション理論に到達するまでにどのような問題意識で、問題にアプローチして、一つの問題が解決すると、また別問題が表れて、それをどう克服していったのか、というところはリアルな仕事という感じがして面白いと思いました。

教科書はそうした研究の結果を分かりやすく噛み砕いて書いていますが、そこに至るまでには試行錯誤や人間ドラマがある事を感じさせます。

私も、磁気モノポールの問題が、この研究の発端になっているのは知りませんでした。初期宇宙の揺らぎの中で今ある物質が対称性の自発的破れでどう相転移したのか、というところは数式で説明されている訳ではないのですが、物理をやっている人であれば分かるようなライブ感で書かれているのでなるほどと思いました。

この辺り、一般相対論を再度復習してブラックホールあたりまで勉強したら一度勉強したいと思います。

なお、この本には一切佐藤勝彦先生の言及がありませんでした。そういうものなんでしょうか?

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