熱力学 フェルミ

熱力学の本は、原島先生の本以外紹介していませんでしたのが、別の本としてこれを。


フェルミ統計で有名な、エンリコ・フェルミの熱力学の教科書です。1936年のコロンビア大学の
夏の講義をベースにした本だそうです。

この本は、統計力学ではなく熱力学の範囲におさめた内容となっています。熱力学の第一法則、
第二法則、カルノーサイクル、熱機関、エントロピーと内容としては非常にオーソドックスで
シンプルな内容となっています。

後段は、物理の本にしては珍しく気体の化学平衡や希薄溶液での浸透圧や溶液中の化学平衡、
蒸気圧降下や凝固点降下などのトピックも取り上げられており、物理化学で扱うような内容に
なっています。

熱力学の前段部分は高校の熱力学で実は相当程度の範囲を終えており、エントロピーの概念が
あれば、後はルジャンドル変換をマスターすれば良いと思うのですが、これにいったい何の
意味があるのだろうと習った当初私は分かりませんでした。

これは、物理というよりはむしろ化学の方で実験条件において定圧変化、定積変化などにおいて
どうした環境下で実験するかでどのエネルギーを考えるのかが良いか、また開放系と閉鎖系での
違いで扱いを変えるといいという事が分かって自分自身で腑に落ちた記憶があります。

この本は、通常の表記と異なっているところがありますが、後段の応用例を見るとそうした意図が
分かるのではないかと思います。

私の場合は、熱力学は原島鮮先生の本で、統計力学は原島鮮先生と久保先生の本で勉強し、この本は
大学院の時に安かったので手に入れたというものですが、コンパクトにまとまっているのでポイントを
調べるには便利な本だと思います。熱力学は、巨視的状態なので私の場合は統計力学でミクロとつながって
初めて具体的なイメージが湧くようになりました。

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