集合・位相に関して、東大の数学科で2年生の専門の授業で使われているという松坂和夫氏著の「集合・位相入門」です。入門と銘打たれていますが、ちゃんとしたカチッとした作りの教科書で、特に前提として必要な知識もなく順を追って読み進む事ができます。
私の場合は、志賀先生著の集合30講と位相30講を読んで、なんとなく分かった気がしたので、解析学の基礎をなす集合・位相分野についてこの分野の教科書として定評のある本書を読んで勉強しようと思い手に取ったものです。といっても、買ったのは5、6年前のことですが。
志賀先生の本を読んでいたので、集合と位相でどのような事が議論されるのか、何が分かっていればOKなのかという全体像は頭に入っていたので、後は各部分を丁寧に読み進む事が出来ました。一つ一つの内容はそんなに難しくて分からない、というものではないので一読した時には何となく分かった気がしましたが、その概念を頭の中で具体的に操作できるようになったか、といえばまだまだな気がします。
濃度の部分については、おそらくこの分野の数学を勉強しなければ、物理でも余り出てくる話題ではないので一生関わりがなかった部分だと思います。無限にも種類があり、いろんな種類の無限を作る事ができる、というのは、実用性の観点からはおよそ想像しかねる部分ではあるのですが、ルベーグ積分も含めてこうした無限というところと解析学の深遠な関係というのが、なんとなく垣間みる事が出来た気がします。
位相の部分については、かの有名なイプシロンーデルタ論法を抽象化して再定義すると位相空間における開集合の逆写像の話になるというところは、ロジックを順に追っていくとその通りなのですが、非常にローカルな構造が、構造全体を支配するような感じに見えてとても不思議に感じています。よくこんなことを思いついたものだと感心しています。
未だに、まだ十分にマスターしたとは言い切れないのですが、この辺りの概念をちゃくと理解しておく事が、多様体とルベーグ積分のためには必要であり、時間があるときに再び復習したいと思っています。
それにしても、数学の教科書は定義、定理証明と淡々と書かれていますが、その意味するところを深く理解するには時間がかかりますね。数学科の学生さんはこうしたところを深く洞察できるのでしょうが、物理をやっていた身からすると、その結果何が分かるのか?というところが具体的に提示されて直接的な現世利益みたいなものが分からないと、霧に包まれた感じのままになる気がしてしまいます。
そこが、数学的素養と物理の素養の違いなのかなぁと勝手に感じています。(もちろん数学の出来る物理屋さんもいっぱいいますし、物理センスのある数学屋さんもいると思うので、私の勝手な感想ですが。)
きっとこのあたりより深い理解が進めば、解析学、ルベーグ積分、多様体とかもクリアな見え方をするのではないかと思っています。
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