物性論における場の量子論

いわゆる固体物理学(物性論)に場の量子論の手法を用いて現象を説明するという内容の本です。
固体物理学の授業で、固体物理学2とか固体物理学3などの進んだ課程では、普通に格子振動の量子化でPhononとか、Debye温度の話、超伝導、超流動などがトピックスとして出てくると思います。現象の説明とあわせてその仕組みとしては結構泥臭い方法で導出される事が多いと思いますが、この本は場の量子論の成果を用いて、この辺りをエレガントに書き直しています。
もちろん、最初に現象を理解していてそれがどのような形で説明されるのかを伝統的な方式で勉強する事も必要ですが、エレガントな形式で記述されると全体的な見通しがよくなるのと、物理を貫く他の現象との関連性、またその背後にある数学的の位相的/幾何的な要請が、物理の法則にも出てくる事が分かります。
他方、それが分かったからといって新しい現象が発見できるわけでもなく、研究者としてであれば道具としてそれを使いこなして新たな成果を出す必要はありますが、関連分野についての深い洞察、視野を得るためには良いと思います。
本としては、読みやすいし、日本語でこうした物性分野で大学院レベルで知っておくべき現象について体系的で理論的な説明があるものは、当時はありませんでした。学部時代の量子力学や統計力学と比べるとより具体的であり、場の理論の有り難みを感じる事ができる内容となっています。
目次を参考までに書いておきます。
1 量子力学の復習と場の理論の基礎
1−1 1粒子の量子力学
1−2 多粒子系の量子力学ー第2量子化
1−3 場の方程式の変分原理とネーターの定理
1−4 ゲージ不変性と電磁場の量子化
2 経路積分による量子化
2−1 1粒子の量子力学の経路積分による定式化
2−2 ボーズ系の経路積分表示
2−3 フェルミ系の経路積分表示
2−4 ゲージ場の経路積分表示
2−5 スピン系の経路積分表示
3 対称性の破れと相転移
3−1 対称性の自発的破れ
3−2 ゴールドストーンモード
3−3 コスタリッツーサウレス転移
3−4 格子ゲージ理論と閉じ込め理論
4 場の理論の簡単な応用例
4−1 クーロンガスのRPA理論
4−2 超流動のボゴリウボフ理論
5 超伝導に関する諸問題
5−1 経路積分表示を用いた超伝導理論
5−2 巨視的量子現象と散逸−−ジョセフソン結合
5−3 2次元における超伝導ー絶縁体転移と量子ボーテックス
6 量子ホール効果とチャーンーサイモンゲージ場
6−1 磁場下の2次元電子系
6−2 量子ホール液体の有効理論
6−3 ラフリンの波動関数の導出

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