量子力学入門 (物理テキストシリーズ 6)

岩波の物理テキストシリーズの量子力学入門です。私は、専門課程に入ってから初めての量子力学の授業が、この著者である阿部龍蔵教授でした。実際の講義もだいたいこの本に沿った形式で進んで行きました。
それまでに物理だと力学(解析力学の触りも含む)、電磁気学、波動、熱力学・統計力学を終えて量子力学をやることになると思いますが、始めの概念を受け入れがやりづらい分野だと思います。
とはいえ、よくあるブルーバックス的な量子力学の確率論的世界のいろいろな説明と授業にはギャップが有り、実際に解析力学のハミルトン形式での定式化、シュレディンガー方程式あたりまでは、なかなか考えて納得するというよりも、そういう歴史的な経緯を踏まえていったんは受け入れてだんだんその概念、使い方に慣れていくというもののような気がします。
一次元の固有関数、井戸型ポテンシャルのトンネル効果や、水素原子の波動方程式までが説明されており、典型的な量子力学1でカバーされる内容がまとめられていて、説明も分かりやすいです。
私は、3、4年の時に復習という意味で本を買いましたが、リアルタイムに習っていたときには以前紹介した小出さんの本とSchiffを使っていました。単に存在知らなかっただけということも有りますが。
量子力学1の分野は、ハミルトン形式の解析力学の演算子を量子化し、シュレディンガー方程式を受け入れてしまえば、一次元系は単にexp(ikx)の波動方程式の扱いになりますし、3次元系では特殊関数の取り扱いが出てきますが、やることはストレートなのでそんなに迷うことはないと思います。
量子力学2、3のハイゼンベルグ形式、角運動量の量子化、摂動、Dirac方程式、第二量子化とトピック的には、ここから更に進んだところの方が面白いと思うし、実用的には素粒子でも物性でも場の理論に入らないといろいろな現象を説明するにはツールとしては足りないので、この辺り、いろいろな数学的にも、物理的にもいろいろな要素が絡んできて一回でストレートに理解するのは難しいかもしれません。
こうした概念を知って授業や演習、他の統計力学や電磁気学の進んだトピックスを触れていることで、螺旋階段を上るように各分野の理解が総合的に深まることで、量子力学についてもより深まった理解が得られるのではないでしょうか。私も授業にあわせて問題演習の授業があり、それと他の分野で量子力学のトピックスが使われていることを通じて徐々に慣れていった記憶が有ります。この教科書に書いてあるレベルで止めてしまうと量子力学の触りに触れたことにはなりますが、味わい尽くしたことにならないと思うので、頑張って場の理論までいってほしいです。
いったん分かってしまうと、どんな本読んでもたいてい同じことが書いてあるので到達すべきレベルについてはこんなものだというのは分かるのですが、初めて学習するときには、コンセプトが分かりにくいと思うので、授業や指定された教科書だけでなく、同時に図書館や本屋で何冊も同じジャンルの本を見てみると良いですね。

第1章 解析力学
第2章 量子力学が生まれるまで
第3章 シュレーディンガー方程式
第4章 量子力学の一般原理
第5章 中心力場にある粒子
第6章 さらに勉学を進めたい人のために

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