電磁気学演習 (物理テキストシリーズ 5)

岩波の物理テキストシリーズの砂川重信先生著の電磁気学演習です。このシリーズは、一見軽装で薄いので簡単そうに見えるのですが、大学物理初学者が始めからこれを読むと歯ごたえがあって難しいのではないでしょうか。始めは、同じく岩波の物理入門コースで基本的なことを押さえてからこのシリーズに入っていった方がいいかと思います。
電磁気学の場合、大学1年後期に高校の電磁気の分野を現象論的に整理した上で、ベクトル解析とあわせてMaxwellの方程式が出てくるところまでが大きな意味での目標だと思います。現象の要素としては定性的には高校物理で出てきているといえば出てきているのですが、それを記述するためのツール(数式)は、ベクトル解析を待たないと与えられないためにここで初めてその定式化がなされることになるわけです。
数学的馴染んでしまえば、割と自然な概念では有るのですが、始めはその式の意味を理解するのに追われて物理現象や、そこから出てくるインプリケーションになかなか到達できないのではないかと思います。理学部系以外の人は、工学部で電気系にいくとまだ続きが有るのだと思いますが、それっきりになってしまう分野ですが、更に進んで電磁気学2とか電磁気学3とかとると、量子力学と並んで学部に入るまでに知っておかなければならない数学が一通りでてきます。
 ベクトル解析、複素解析、特殊関数の展開、フーリエ展開、グリーン関数など、なかなか奥が深いです。
この本は、その電磁気学の深みに入る前のいわゆる学部時代に電磁気学をやったというならこの辺りの問題は一通り、やるよね、というものが取り上げられています。私の場合は、砂川の理論電磁気学を読んで、院試の勉強用にこの本を買って典型的な問題について解けるように夏休みの間勉強していました。力がついたと思います。
この前書きに「この書物は、そのような”引く”演習署ではなく、ある意味で”読む”演習署であるといえよう。ただやみくもに演習問題を解いていたのでは、たとえそれを何千題やったとしても、その次の問題が解けるだろうかという不安からまぬがれることはできない。ところが、電磁気学という学問の基本的構造を正しく理解してさえいれば、せいぜい100題程度の問題をやっておきさえすれば、どのような問題にも対応できるという自信を持つことができるのである。」とあり、そのときは、そうかと思ってこの本の演習に取り組みました。
これと砂川の理論電磁気学、ランダウの場古典の電磁気学の部分あたりを勉強しておけばだいたい必要なことはもらできたといえるのではないでしょうか。後、有名なものにジャクソンの電磁気学が有りますが、私はこの本を読んだことがないのでコメントできません。

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