位相への30講 (数学30講シリーズ)

志賀先生の30講シリーズです。これらのシリーズは、社会人になってから読んだものが多く、これも社会人になってから数学の解析学が懐かしくなり買って読んだものです。
前述の通り、解析学でε-δ論法をうやむやのままクリアしてきたので、コンパクト、や集積点、開包、閉包などの言葉が出てくる位相というものは、数学科の人が勉強するもので、自分には関係ないやと思っていたのですが、関数解析やルベーグ積分においては、位相の考えが正しく分かっていないとちゃんと理解できないという話も聞いており、フーリエ解析も単位をとることに終始してしまった学部時代から振り返ると、いつかは一度勉強した方がいいかも、と思っていました。
この本は、大学初年度程度の知識を前提に、カジュアルな語り口である一定分野の数学の単元をカバーするというコンセプトで書かれており、これをある程度頭に流し込んでから標準的な教科書を読むと中身がよく分かるというものです。数学屋さんには、いい加減に書かれているのかもしれませんが、数学を専門としない私には、とっかかりとしてはイメージがわいて非常に良かったです。
イプシロンデルタの自然な拡張として、関数の連続性を近傍で表現し直すところがあり、開集合の逆像が開集合であることが写像(関数)が連続であることは、感銘を受けました。
確かにいわれるとその通りなのですが、近さという概念を持ったε-δという考え方がいつの間にやら近傍における開集合となり、その集合から集合への写像へと抽象度があがることにより、より見通しのよい統一的な表記法で連続やコーシー列を記述できるというところが、現代数学の威力だと思いました。
確かに、これ自体と実際の計算できることはまた別の問題ではあるのですが、こうした基礎の部分がちゃんと気づき上げられてきているが故に、複素解析やルベーグ積分などが展開されるということなのだと思います。
物理の場合は具体的な現象があり、それを説明する理論構築ということが割とはっきりと分かるのですが、数学の場合は、ある一分野を基礎科目であるからということで勉強してもその結果どういったご利益があるかが直ちに見えないところが分かりにくいのだとは思いますが、次のステージに行くとその効果や威力を思い知るというところでしょうか。
ある意味、大学や大学院での数学や物理は知らないでも世の中で困ることはほとんどないとは思いますが、知ることによって、数学という世界の深み、自然界の深みというのに近づけるという醍醐味がありますね。

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