大学教養での熱力学/統計力学の指定の教科書でした。分かりやすい本だと思います。熱力学は、高校時代に学んだ内容を巨視的変数でもって熱力学の第1法則から第3法則まで定式化されるのですが、正直初めて勉強したときには、「よく分からん」という印象でした。高校時代に知っていたことを定式化するご利益がいまいち分からなかったのと、いくつもエネルギー(内部エネルギー、エントロピー、エンタルピー、Helmholtzの自由エネルギー、Gibbsの自由エネルギー)が出てきて、さらに独立変数がそれぞれ変わり、Legendre変換で行き来させるのですが、「何のために?」というのが分かりませんでした。
他方、化学の方で物理化学を勉強し、実験環境として閉鎖系と解放系や、圧力一定と諸条件の違いがあるということをしり、それに都合の表現方法でこうしたエネルギーが記載されて出てくるのを見たときにようやく腑に落ちた記憶があります。
それでも巨視的変数をいじくって何らかの関係性を出すことは数式変形上は理解しうるものの、その裏側にあるミクロな現象との結びつきがイメージできずもやっとしていた気がします。
この本は、後段は統計力学についてなのですが、気体分子運動論、Maxwell分布の粗い導出、microcanonical ensembleから分配関数が出てくるあたりは分かりやすいと思います。これも、初めて勉強したときには、解析力学や量子力学の造詣が乏しく、単に数式変形上そうなることとエルゴードの定理をまあ、そんなものかと認めてしまえば理解できたのですが、味わいが出てくるのはやはり、解析力学、量子力学、固体物理学が自分にとってこなれてきた頃で、ちょうど、大学院試を受けるために夏物理の各分野を再度勉強した時に各種分野が有機的につながり、一段深い理解ができるようになりました。
Debye温度の理論的計算や磁性体モデルなど、専門における統計力学の味わいかと。
そうした目で読み返すとよくできた本だと思いますが、大学2年時で書いてあることのどこまで吸収できたかというとおそらく1/3もなかったのではないかと。。。
参考までに目次です。
1 温度と状態方程式
2 熱力学第一法則
3 熱力学第二法則
4 熱力学の諸関数
5 熱力学的変化の進む方向
6 相転移の熱力学
7 開いた系
8 混合気体と溶液
9 熱力学第三法則
10 不可逆過程の熱力学
11 統計理論の問題
12 Liouvilleの定理と各種集団
13 量子論的Liouvileの定理と各種集団
14 量子論的小正準集団
15 量子論的正準集団
16 不完全気体の理論
17 液体の統計力学
18 固体の統計力学
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